彼の瞳に独占されています
「淳一……!」


見上げた先にいたのは、いたずらっ子みたいな笑みをうっすらと浮かべる彼だ。

いつの間にか制服も半袖に変わっていて、そこから伸びる逞しい両腕には、私が持とうとしていた段ボール箱が軽々と抱えられている。


「腰悪くしたら可哀相だから運んであげますね、おばあちゃん」

「……お気遣いどうも」


にっこりと笑う彼に、口の端をヒクッとさせて皮肉を返す私。

せっかく、優しいなーってポイントがアップしたところだったのに、まったくこの男は。

とりあえず運んでもらえるのはありがたいので、文句は言わずふたりでエレベーターに乗り込む。七階を押し、ゆっくり扉が閉まってすぐに淳一が口を開く。


「萌、最近何かあっただろ」


ギクリとした。永瀬さんのことは、淳一には何も言っていないから。というか、何でわかったんだろう……。

彼からエレベーターの扉へと目線を移して、なるべく普通に言う。


「別に……何もないよ」

「しらばっくれても無駄だぞ。俺が何年お前のこと見てると思ってんだ」


少しだけささくれ立ったような口調だけど、なぜだか胸の奥がじわりと火照る。

……そうだよね、淳一に隠し事は通用しない。だって、一番私のことを理解してくれているから。

今まで付き合った、どの彼氏よりも。

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