彼の瞳に独占されています
骨抜きにされ、コトが終わってすぐにウトウトしていた私に、浮名さんはこう言ったらしい。

『萌ちゃん、セフレで良ければ俺と付き合う?』と。

眠りに落ちる寸前だった私は、“セフレで良ければ”という注意事項を聞き逃していたのだ。

つまり。私は自分が恋人だと勘違いしていた、ただのあほぅな女だったという……。





『あーやばい、笑いすぎて腹よじれる。付き合ってると勘違いしてたとか、お前それマジで痛いわ』

「もうちょっと気を遣ってよ! これでも一応傷心なんだからね!?」


先ほどの情事から約一時間後、ひとりきりになったスーペリアルームのふかふかのベッドの上で、私は耳にあてたスマホに向かって叫んでいた。

浮名さんはヤることヤッたら帰っちゃうし。ホテルの宿泊代は出してくれたから、私は一泊していくけど。

電話の相手はいまだに笑っていて、ふて腐れる私は左手に持つ二本目の缶ビールをぐびぐびと呷る。


『“介抱してくれた人と付き合うことになった”って聞いた時は、そんなマンガみてーなうまい話があるか?と思ってたけど、やっぱりな』

「うぅ……」


バカにするような口調で言われてかなり腹立たしいけど、その通りだから返す言葉もない。

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