彼の瞳に独占されています
ただの警備員? 安月給?

それが何だって言うのよ。迷惑な人を注意しちゃいけないとか、偉くないとか、そんな決まりがどこにあるの?


特別な資格がなくてもなれる警備員だけど、内容は決してラクじゃない。時間は不規則だし、薄給だというのも否定はできない。

それでも淳一がこの仕事を続けているのは、人の役に立つことができるから。淳一達がいるから、皆楽しく買い物ができるし、私達も安心して働けるのよ。

その大事な仕事をそんなふうにけなすなんて……許せない!


「ふざけんじゃないわよ……」


暗い声でボソッと呟いた。若干震えているのは、恐怖ではなく怒りからだ。

私の異変に気付いた淳一が、「萌?」と戸惑いの声を漏らした。それに構わず、隠れていた彼からひょこっと顔を出す。


「どんな仕事だって、誇りを持って一生懸命働いてる人をバカにしないで! あなたにそんなこと言う権利はない!」


男に負けないくらいの声で叫ぶと、一瞬周りがしんと静まり返った。淳一も目を丸くしている。

ケンカ腰で彼を睨みつけていると、その顔はみるみる険しくなっていく。


「……なんだとぉ!?」


男は淳一の手を振りほどき、私に向かって掴み掛かろうとしてきた。

< 53 / 124 >

この作品をシェア

pagetop