彼の瞳に独占されています
再びざわめく店内。一気に危機感が戻ってきて、小さな悲鳴を上げた私は、ぎゅっと目をつぶって淳一の陰に身を縮める。

……その、わずか数秒後。


「あたたたたっ!!」


叫び声にギョッとして目を開くと、苦痛に歪んだ男の顔と、彼の後方に冷たい表情の淳一がいた。

男は呆気なく腕を捻り上げられたらしい。空手の有段者で黒帯を持っている淳一からすれば、ほんの朝飯前に違いない。


淳一は制帽が落ちて、無造作に毛先が散らばる黒髪が露わになっている。

彼はもがく男に氷点下の視線を突き刺し、静かだけれど怒りが滲む声で、よくわからせるように言う。


「俺のことは何言っても構わないけどな、萌に手を出すのだけは許さない」


──ドキン、と心臓が強く揺れ動いた。

その刹那、昔の記憶がフラッシュバックのように蘇る。

淳一はあの時も同じようなことを言って、私を守ってくれた。あの頃から、この人は変わっていないんだ──。

なんだか胸が熱くなって、もどかしくて、ボウタイブラウスのリボンをきゅっと握りしめた。


「話し合いで解決できなさそうなので、警察に連絡します」


冷静さを欠かない淳一が、片手で無線機を見せながら言うと、男は「悪かった、悪かったよ~」と情けない声を上げる。

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