彼の瞳に独占されています
「あのね、俺の女なんて言ってないから。それたぶん、おばちゃんの妄想が混ざってる」

「あれっ、そうなんですか? でも似たようなことは言ってたんでしょう? 淳一さん、やっぱり先輩のことが特別なんですよ!」

「そんなんじゃないんだよ。あいつは親友として私をほっとけないだけなんだって」


笑って言ったつもりが、思いのほか強い口調になってしまった。

にんまりしながら話していた弥生ちゃんだけど、箸を止めて、少し驚いたように目を開いている。


……だって、淳一と恋愛関係になってもうまくいかないことを、私は知っているから。

だんだん心が窮屈になってくるような感覚をごまかしつつ、私はいびつな笑顔を取り繕う。


「弥生ちゃんが想像するような甘い意味はないの。私だって、そんなのは期待してないし──」

「嘘」


彼女の口からビシッと放たれたその二文字は、私の不安定な心に突き刺さる。

無意識に逸らしていた目線を彼女に戻すと、真実を見抜こうとするまっすぐな瞳が私を捉らえた。


「先輩、いつまで自分の気持ちごまかすつもりですか」

「……え?」

「あたしは気付いてましたよ。先輩が“親友”って言うたびに苦しそうな顔してること」


ドキリ、と胸が軋む音がする。

そんな顔をしていたなんて自分ではわからなかったけれど、要因に心当たりはあるから。

< 61 / 124 >

この作品をシェア

pagetop