彼の瞳に独占されています
でも、本気で好きだったのかと自分自身に問い掛ければ、しっかりと頷くことはできない。

虚しさはすごくあるけれど、涙は一滴も出ないし。きっと、“恋に恋してた”状態だったんだろうな。

あぁ、二十六歳にもなってこんなんじゃ、先が思いやられる……。


「はぁ……自分に呆れるよ」


浮名さんがいなくなった悲しさではなく、自分の浅はかさに嫌気がさして、ツンと鼻の奥が痛くなった。

情けない声を出して黙り込む私に、淳一は怒った子供みたいな口調でこんなことを言う。


『俺の萌を泣かせやがって。覚えてろよウッキーナ』

「いろいろツッコミどころはあるけど、ウッキーナはやめよ」


私は淳一のモノではないし、泣いてもいない。けど、まずその呼び名がおかしすぎて、私は言いながら吹き出した。

じわじわと笑いが押し寄せてきて肩を震わせていると、淳一もふっと笑いをこぼす。


『やっと笑ったか。お前が元気ないと俺も調子出ねぇから、頼むよ』


……あ、なんか少しキュンとしてしまった。淳一相手に。


『萌はちょっとおバカさんだけど、そんなとこもひっくるめていいって言ってくれる男は絶対いるから。大丈夫だよ』


優しい言葉が耳に届いて、じんわりと胸に染みていく。

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