彼の瞳に独占されています
◇素直になれないのは恋心のせい


うるさいエンジンの音、引き離されそうだけど爽快な風、スピーディーに流れていく街並み……。

すでに二十分ほど走っただろうか、右手にオレンジ色に染まる綺麗な海が広がっている。

それを楽しむ余裕が出てきていた私は、赤信号に差しかかったとき、エンジン音に負けないくらいの声で叫ぶ。


「きれーい!」

「この眺め、最高だろ」


淳一も声を上げ、うん!と頷いた瞬間、ゴツンとヘルメットがぶつかってしまい、ふたりで大笑いした。

そうして海岸沿いにバイクを停めると、暑かったヘルメットを取り、海風に髪をなびかせる。


「なんだかんだで気持ちよかったー!」


大きく伸びをして言うと、バイクを降りた淳一は、「だろ?」と得意げな顔をした。そして、正面からなぜかこちらに両手を伸ばしてくる。


「頭すごいことになってるけどな」


笑いながらそう言うと、乱れた私の髪を優しく手直ししてくれる。

子供みたいで恥ずかしいのと、その仕草にドキッとしてしまったことがバレないように、私はただ俯いていた。

バイクの傍らにふたりで腰を下ろし、まだサーフィンをしている人や、海水浴を終えて帰る人たちを眺める。

波の音が心地良く響き、夕日色に照らされる世界はとても美しく、少し切ない。

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