彼の瞳に独占されています
心の内を吐露しながら、自分自身と向き合う。

上辺だけじゃなく、心の底からの愛情がなければ、男女関係はうまくいくはずがないということを、本当はちゃんとわかっていたはず。

それなのに、どうして気づかないフリをしていたのか、それは──。


「じゃあ、これまで付き合った男は、皆たいして好きじゃなかったってことか?」


考えを巡らせていると、淳一が問い掛けてきた。片膝を立てて座る彼の視線は、まだ海に向けられたまま。

責めるでも、呆れているでもなく、淡々とされた質問に、私は苦笑混じりに「そうなるね」と答えた。

これまでたくさん淳一に相談してきたというのに、そのどれもが本気の恋じゃなかったなんて、呆れられて当然だと思うけれど。

しかし、次に彼の口から飛び出したのは、思いもよらない一言。


「俺のことも?」


ドクン、と心臓が大きく波打った。

海からこちらへと移された、真剣な眼差しに捉えられて、私はまばたきすらもできなくなる。

動けずにいると、淳一は「……って、聞くだけ野暮だよな」と、口元に笑みを浮かべて冗談っぽく言った。


なぜ彼がこんなことを言うのかというと──私たちは、一度付き合ったことがあるから。

高校二年の春から半年ほどの間、私たちは一応恋人という関係だったのだ。

< 74 / 124 >

この作品をシェア

pagetop