彼の瞳に独占されています
今の自分からは想像もつかないほど、あの頃の私はピュアだった。それは相手が淳一だから──本気で好きな人だったからなのだと、今ならわかる。

けれど当時は、“やっぱり私たちは親友のままが一番いい関係なんだ”と思ってしまった。ぎくしゃくするくらいなら、友達の方がいいと。

私からそのことを切り出すと、淳一も『そうだな』と言い、特に反論することなく私たちの関係は元通りになった。


……彼に新しい彼女ができたことを知ったのは、それから数ヶ月後。

学校の階段の陰で、キスしている場面を偶然目撃してしまったのだ。

やっぱり私のことはたいして好きではなかったのだと思うと、かなりショックだった。その反面、数ヶ月前は私があの立場だったのに、どうして簡単に諦めてしまったのだろうと後悔もしていた。

でも、淳一たちが別れた後も、友達のままがいいと私自身が言い出した手前、もう一度やり直したいと言うことはできない。

何より、淳一も私のことを友達だと思っているのが痛いほどわかるから、これまで必死に自分の気持ちを押し殺してきたのだ。


淳一のことはもう好きではないと言い聞かせ、彼の親友に戻ろうと努力して……。そうしているうちに、本当にもう未練はないのだと自分自身を騙せるようになり、他の男性とちゃんとした恋愛をしている気になっていた。

本当は、淳一への想いを封じ込めるための、カモフラージュに過ぎなかったのに。

私が求めていたのは、お金でもスーツが似合うイケメンでもなく、いつも近くにいたこの人だけだったというのに──。

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