彼の瞳に独占されています
ずっと考えないようにしていたこととやっと向き合うと、『俺のことも?』という淳一の一言に返す言葉は簡単に出てくる。

誤解されたままでいたくない。これだけは言っておかなくちゃ。


「……本気、だったよ」


膝を抱えたままぽつりとこぼすと、彼が再びゆっくりこちらを向く。


「淳一のことだけは」


視線を絡ませ、正直に口にすると、一瞬彼の切れ長の瞳が、驚いたように開かれた。

時間が止まったかのように感じるわずか数秒後、彼はふっと柔らかな笑みをこぼし、薄い青とオレンジのグラデーションがかかる空を見上げる。


「そう言ってもらえると、冗談でも嬉しいわ」


それは嫌味っぽくもなく、本心のように聞こえた。

冗談じゃないんだけどな……。

でも、今さら本気だったと言っても、たとえ告白したとしても、冗談にしか聞こえないか。

もう、手遅れかな。

再び膝に目線を落とす私に、淳一はいつもの明るい調子で話しかける。


「まーたしかに萌が選ぶのは、“本当にそいつとうまくいくか?”って感じのイケメンエリートばっかりだったけど。条件で選んだって、そこに愛があれば何も問題ないし、これからそういう相手を見付ればいいんだよ」

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