その羽根を僕にください
1.ご臨終です
それは寒い夜。
クリスマスイブだった。

僕は真由ちゃんとバイバイして帰ろうと思ったんだ。

でも、僕の視界に不自然なライトの光が見えて、その瞬間、真由ちゃんを突き飛ばしていた。



僕の体が宙に浮いたのがわかった。
その瞬間、酷い衝撃。



ああ、痛い。
変なところを痛めてしまったな。
今までレースでたくさん転倒したけれど、いつもと違う痛み。


「大丈夫?」

真由ちゃんが駆け寄ってきて僕を抱きかかえる。


「…うん。なんとか」

いや…、おいおい、なんとかって。
自分ではわかっている。
もう、どうしようもない。

「今、救急車を呼ぶから」

そう言って真由ちゃんは立ち上がろうとする。
この手を、放してはいけない。
僕は渾身の力を込めて真由ちゃんの手を握った。

「…僕の言った事、覚えてるよね?」

ごめん、真由ちゃん。
本当にごめんね。

「大丈夫か?」

「お願い、救急車呼んで」

真由ちゃんのお父さんが慌てて出てきた。
もう、救急車なんて呼ばなくていいよ、真由ちゃん。
最後の声を出さなきゃ。

「…約束して。
絶対に幸せになるって。
たとえ僕がいなくても…」

「何、馬鹿な事、言うのよ!!
冗談もいい加減にしてよ!!」

真由ちゃん、そんなに泣かないでよ。

重い腕をゆっくりと上げる。
真由ちゃんの頬を伝う涙を拭う。
激痛の走る体を起こし、そっと唇にキスをした。

「ありがとう」



体が暗い闇に落ちていく。
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