その羽根を僕にください
その次に僕は弟の祥太郎の元へ。
5歳離れている祥太郎はずっと泣いたまま、真由ちゃんの傍にいた。

「兄ちゃん、酷い」

祥太郎は泣きながら真由ちゃんを見つめた。
真由ちゃんはもう、出る涙もないらしく俯いたまま動かない。



この声が…届けば良いのに。



「ごめんね、本当にごめん」

二人の目の前で言っても、もう聞こえない。



「祥太郎君」

真由ちゃんの、今にも消えそうな声。

「拓海君をもう責めないで」

真由ちゃんはゆっくりと顔を上げた。

「…拓海君にこんな事が聞こえたら。
きっと自分を責めるから。
もう止めて、お願いだから」

顔色が悪い…。
でも真由ちゃんは祥太郎を見つめて微笑んだ。

「私が一番悪いのよ。
みんなに謝らないといけないのは私。
拓海君の命を奪ってしまった。
本当にごめんなさい」

真由ちゃんはそのまま泣き崩れる。



「…一番悪いのは僕」

本当に切ない。
生きていて一番大切な人にこんな事を言わせる僕が一番、情けない。

真由ちゃんの前に回ってそっと抱きしめた。

でも…もう実体のない僕は真由ちゃんの暖かさが感じられない。

それが死んでしまって一番の後悔。



「あ…」

何かを感じて僕は下を見つめる。
真由ちゃんのお腹の下…?

「見えてる?」

いつの間にか20が隣にいて、思わず声を上げそうになる。

「…何か、光ってる」

じっと得体のしれない何かを見つめた。

「そう、拓海にも見えるんだ!嬉しい」

20は本当に嬉しそうな顔をしている。

「拓海、この人生で沢山の経験をしたのね。
だから見えるの、新しい命が」

僕は眉をひそめる。

「この空間にいるから見えるんじゃないの?」

人の世界じゃない場所にいるから見えると思うけど。

20は首を横に振る。

「見えない人はここに来ても見えないよ。
魂が若いか、経験不足かな」

20はニコニコして僕を見つめていた。
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