その羽根を僕にください
「そーちゃん、色々とありがとう。
何度お礼を言っても足りないよ。
…迷惑ついでにごめん、真由ちゃん達の事をお願いします」

まだその世界では誰も気が付いていない、その存在を。

どうか守ってください。



「あーあ…。
これから俺、どうしようかな。
もう引退する予定だったのにな。
拓海がいないなら、止めても仕方がない」

そーちゃんは大の字になって寝転んだ。

「ごめんね、そーちゃん」

僕の為に。
自分のライダーとしての人生を終わらせようとしていたそーちゃん。

でもね。
勿体ないよ。
そーちゃんはまだまだ走られる。

僕のメカニックになるって言ってくれた時は本当に嬉しかった。

でも…

それはそーちゃんがライダーとして走らない、という意味になる。

「そーちゃん、きっとそーちゃんなら勝てるよ。
チャンピオンになってもおかしくない。
今は中々勝てなくても、上手くいかなくても諦めちゃダメだよ」

聞こえてるのかな?というくらい、そーちゃんは何度か頷いた。

「…拓海が走られなくなった分まで走ろうかな」

そう呟いたそーちゃんは天を見つめる。

「お前がいなければ…レースを止める理由は俺にはない」

その目…そうだよ、そーちゃん。
まだまだ止める理由なんてないよ。

きっとそーちゃんなら勝てるから。
それは傍にいた僕が一番知っている。

「そーちゃん、頑張って」

僕はそーちゃんの手に自分の手を重ねた。

どうか、一番高い場所から最高の景色を見られますように。
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