その羽根を僕にください
「ふふっ、何をして良いのかわからないっていう顔をしているよ」

20は微笑む。
その笑顔に癒される事が多くなった気がする。

「わかるわけ、ないよ」

少しだけ、言葉に含んだ拗ね。
20はますます面白そうに笑う。

「人助け、と言ってもね。
ただ、心の叫びを上げた人の側にいてあげて欲しいの。
ただ、それだけの話。
…簡単でしょ?」

「…簡単?」

思わず、聞き返す。

「全然簡単じゃないよ。
心の叫びを上げる、なんて人はもうすでに大変な状態に陥っているんじゃないか。
そんな人、見てられないよ」



僕は…
そういう人の気持ちがよくわかるから…



「だから拓海に頼んでる」

20の目が座った。
思わず背筋を伸ばす。

「…あなただからこそ、わかる痛みを。
それを同じようにわかってあげて欲しいの」

20はプイっと後ろを向いた。

「…あなただから、出来る事が沢山あるの。
お願い、承知して」

再び僕の方に向いた20の後ろにはキラキラと輝く光がどこからともなく差し込めていた。

「…うん、頑張る」

「ありがとう!」

20の柔らかな感触を体に感じた。
彼女は僕の体に思いっきり抱きついてきたのだ。



あ…。



何かを思い出しそうなのに…。
思い出せない。

20から感じるこの懐かしい感覚。
この香り。



「20」

「ん?」

20は大きな瞳を僕に向けた。

「僕達、どこかで会ってる?」

20は瞬き一つせず僕をしばらく見つめている。

「…さあ、どうだろう。
拓海がそう思うならそうだろうし」



また20にはぐらかされてしまった。
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