その羽根を僕にください
本当にそーちゃん、ごめんね。
僕は薬局で一人悩むそーちゃんの隣で謝り倒す。
妊娠検査薬をどれにしような悩んでいる。
「何かお探しですか?」
薬剤師さんがそーちゃんに声を掛けてきた。
「あ…」
一瞬、そーちゃんは目を逸らす。
そして見上げたその目はすっと一本、筋が通ったような目をしていた。
「妻が。
どうやら妊娠したようなのですが、体調が悪くて動けなくて。
代わりに検査薬を探しに来たんですがどれがいいのかわからなくて」
薬剤師さんは優しく微笑んで
「そうでしたか、では…」
そーちゃんにアドバイスをしてくれた。
『妻』か。
その言葉に少し胸が痛い。
その夜に緊急の家族会議が開かれた。
父さんが言うには
「…真由ちゃんのこれからの人生を考えると、酷だけど堕ろした方がいい気がする」
真由ちゃんは顔を下に向けたまま上げようとはしなかった。
真由ちゃんの隣に、そっと座る。
僕がいなくなった悲しみ。
そして予想外の新しい命の誕生。
どうすれば良いのかわからない自分。
真由ちゃんの感情はグチャグチャだった。
そっと真由ちゃんを抱きしめる。
絶望的な悲しみに包まれていて、僕の胸も張り裂けそうだ。
「あ〜あ」
祥太郎の、その声が一瞬、この場の凍てついた空気を溶かした。
「俺が18だったら、真由ちゃんを今すぐお嫁さんに貰うのにな」
えっ!!!
お前、まさか?
そうなの?
真由ちゃんから離れて祥太郎の額をそっと触れる。
ああ、そうだったんだ。
お前の初恋、真由ちゃんだったのか。
思わず苦笑いをしてしまった。
真由ちゃんは産みたいかどうか聞かれて、産みたいと言ってくれた。
「私には今でも拓海くんしかいない。
他の人と一緒になるくらいなら、一生大変な目をしてでも一人で子供を育てる」
そんな言葉、僕には勿体ないのに。
本当にごめんね。
「それが甘いんだよ」
真由ちゃんの想いを切り裂くようなそーちゃんの言葉。
「一人で育てるって、どれだけ大変かわかる?
子供も寂しい思いをするし、真由ちゃんがしんどくても働かないといけないんだよ」
…子供が寂しい思いをする事はそーちゃんが一番よく知っている。
複雑な環境で育ったからね。
「死んだ拓海をずっと思い続ける気持ちはわかるけど、真由ちゃんが産むと決めたなら子供も、自分自身も大切にしてくれる人のところに行くのがいいと思う。
今の真由ちゃんでは産んで一人でなんて育てられない。
ご両親にも相当な迷惑がかかる」
そーちゃん…。
僕は大きくため息をつく。
その決意、そうか、真由ちゃんの妊娠に気が付いた時からだったんだね。
「他の人の元へ真由ちゃんも、拓海の子供も行くくらいなら。
…俺の所に来たら?」
そーちゃんの優しい目が真由ちゃんを見つめた。
僕は薬局で一人悩むそーちゃんの隣で謝り倒す。
妊娠検査薬をどれにしような悩んでいる。
「何かお探しですか?」
薬剤師さんがそーちゃんに声を掛けてきた。
「あ…」
一瞬、そーちゃんは目を逸らす。
そして見上げたその目はすっと一本、筋が通ったような目をしていた。
「妻が。
どうやら妊娠したようなのですが、体調が悪くて動けなくて。
代わりに検査薬を探しに来たんですがどれがいいのかわからなくて」
薬剤師さんは優しく微笑んで
「そうでしたか、では…」
そーちゃんにアドバイスをしてくれた。
『妻』か。
その言葉に少し胸が痛い。
その夜に緊急の家族会議が開かれた。
父さんが言うには
「…真由ちゃんのこれからの人生を考えると、酷だけど堕ろした方がいい気がする」
真由ちゃんは顔を下に向けたまま上げようとはしなかった。
真由ちゃんの隣に、そっと座る。
僕がいなくなった悲しみ。
そして予想外の新しい命の誕生。
どうすれば良いのかわからない自分。
真由ちゃんの感情はグチャグチャだった。
そっと真由ちゃんを抱きしめる。
絶望的な悲しみに包まれていて、僕の胸も張り裂けそうだ。
「あ〜あ」
祥太郎の、その声が一瞬、この場の凍てついた空気を溶かした。
「俺が18だったら、真由ちゃんを今すぐお嫁さんに貰うのにな」
えっ!!!
お前、まさか?
そうなの?
真由ちゃんから離れて祥太郎の額をそっと触れる。
ああ、そうだったんだ。
お前の初恋、真由ちゃんだったのか。
思わず苦笑いをしてしまった。
真由ちゃんは産みたいかどうか聞かれて、産みたいと言ってくれた。
「私には今でも拓海くんしかいない。
他の人と一緒になるくらいなら、一生大変な目をしてでも一人で子供を育てる」
そんな言葉、僕には勿体ないのに。
本当にごめんね。
「それが甘いんだよ」
真由ちゃんの想いを切り裂くようなそーちゃんの言葉。
「一人で育てるって、どれだけ大変かわかる?
子供も寂しい思いをするし、真由ちゃんがしんどくても働かないといけないんだよ」
…子供が寂しい思いをする事はそーちゃんが一番よく知っている。
複雑な環境で育ったからね。
「死んだ拓海をずっと思い続ける気持ちはわかるけど、真由ちゃんが産むと決めたなら子供も、自分自身も大切にしてくれる人のところに行くのがいいと思う。
今の真由ちゃんでは産んで一人でなんて育てられない。
ご両親にも相当な迷惑がかかる」
そーちゃん…。
僕は大きくため息をつく。
その決意、そうか、真由ちゃんの妊娠に気が付いた時からだったんだね。
「他の人の元へ真由ちゃんも、拓海の子供も行くくらいなら。
…俺の所に来たら?」
そーちゃんの優しい目が真由ちゃんを見つめた。