その羽根を僕にください
そこは混雑する空港だった。

あ、そうか。
透、大学は遠くへ行っちゃうんだ。
その場を見ると、そこにいる人々の状態や環境、思っている事がわかる。

透のお兄さんか。
色々としてもらった記憶があるな、この人には。

いや、そんな事よりも。

透から感じるこの悲しみは一体、何だろう?

お兄さんと握手をして別れる時。
その時も悲しみが少しだけ感じる事が出来た。

それ以上の何か。

歩き出した透は一瞬、振り返る。
懐かしさと悲しさが入り乱れる。

透の体が一瞬、大きく後ろのめりになる。

「あ…」

目の前には淡路さん。透の腰には妹が抱きついている。

二人の間に流れるこの空気は…。
本当に穏やかで。
離れちゃいけない!!って思うのに。
大好きなのに。
離れていくのか、この二人は。

「ハル、これからは遠く離れるし何年も会えないから彼女でいて欲しいなんて言えないけど…。
僕は今、ハルが好きだよ」

「…ありがとう、透。
でも透、あなたにはあなたの人生がある。
それを束縛するような事は私には無理。私も透が大好きだよ。
…本当ならもっと大人になってから会いたかったなあ」

そんなセリフを吐くぐらいなら、もう一度。
素直になって付き合いなよ。
泣くほど、お互い好きなのに。

次、会える保証なんてどこにもないんだよ。

僕と真由ちゃんみたいに。
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