その羽根を僕にください

「…僕は成仏出来ないの？」

思わず聞いてしまった。

「…君には、色々とあるの。
今は言えないけど」

「なーにーそーれー…」

もう、ため息しか出ないよ。

「ところでさ」

この羽根の子に聞きたいことがある。

彼女は首を傾げて僕を見つめた。

「キミの名前、教えて？」

名前がわからないとどうも気持ち悪い。

「…20」

「はい？」

「Twenty」

20って…数字か。

「ここに来た時からみんなにそう言われている。
だからそう呼んで…拓海」

迷いながら僕の名前を呼ぶ。

「…ひょっとして、僕、ここで別の名前があるの？」

20はその問いには答えなかった。

「今の貴方は拓海の続きだから拓海と呼ぶわ」

20は優しい笑みを浮かべた。



そのまま視線を下に向ける。
僕の肉体は一旦、自宅へと運ばれる所だった。
それを僕は淡々と見つめていた。

せっかく鍛えたのにな、体。
それだけが勿体ない。

「へえ、拓海っていい体つきしてたんだね」

後ろから20が話しかけてきた。

「うん、鍛えていたからね。
マシンに乗らない時はずっとトレーニングしていた」

そーちゃんと祥太郎と。
辛い時もあったけれど、今となればいい思い出だ。
もう二度と、この２人とトレーニングなんて出来ない。
思わず唇を噛んだ。

「…柏原　拓海という人生。
もっと先に行きたかった？」

20は変なことを聞く。

「もちろん。
もっと色々な事に挑戦したかった」

世界の舞台で走ってみたかった。
真由ちゃんと結婚して子供も作って一緒に暮らしたかった。

「あ…」

急に声を上げた20は眉間に皺を寄せてずっと泣いている真由ちゃんを見つめた。

「拓海、あなたって人は」

呆れ顔の20。

「とんでもないことを…もう、だからかー！！」

「何言ってるの、20？」

一人で叫んで怒っているけれど、意味が判らないよ、20。