ポプリ
「ふうん……ますます天神に興味が湧いてきた。真剣に考えてみるわ」

 真面目な顔で頷いた後、響也は少し悪戯っぽく笑った。

「それに、婚約者に悪い虫がつかないように見張ってないといけないしな。琴音ちゃん、水琴センセーに似て美人だから、お父さん心配だよぉ」

「お父さん、ね」

「う、ほらまたお前はそう、怖い顔で笑う」

「気のせいだよ。それとも、そう感じるということは……君は琴音の父親になることに何か後ろ暗いことでもあるのかな?」

「ないない、ないぞ」

「そうかい? ……まあ婚約の話も、琴音が嫌だと言ったら即解消だからね、響くんにも頑張ってもらわないと」

「……自分の息子の父親になる男がこんな詐欺師まがいな笑い方するヤツかぁ。選択を間違ったかなぁ、俺」


 昔から成長していないような会話を交わす二人は、晴れ渡る窓の外の景色のように穏やかだった。









琴音はヴァイオリニスト、玲音は指揮者の道を歩みました。





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