ポプリ
「花龍ちゃん!」

 その時、人々の隙間から花龍の姿を目敏く見つけた七音が声をかけてきた。

「花龍ちゃん、僕に会いに来てくれたんですか?」

 七音の声に、周りにいる児童たち全員が花龍を振り返ったので、花龍は少し居心地悪そうに頷いた。

「七音に、これ……母上からのも預かってるの。家族みんなで食べてね」

「わあ、ありがとうございます! リィファさんにも後でお礼状を送りますね」

 キラキラ眩しい笑顔に頷きながら、花龍はチョコレートの包みをふたつ渡す。

「七音はモテモテだね」

「そうでもありませんが……でも、もしそうなら」

 さらりん、と黒髪を揺らし、七音は斜め四十五度から花龍を流し目で見た。

「本当に振り向いて欲しい方に見てもらえなかった……その哀しさが、僕をほんの少し大人にしたのでしょう」

 きらりん、とキラキラビームが炸裂した。

 周りから悲鳴が上がり、周囲の女子たちがバタバタと倒れていく。

 だがしかし、花龍はちょこんと首を傾げ、不思議そうな顔をするばかり。

「……フッ」

 七音は哀しみを堪えて微笑んだ。さすが人生でただ一人、僕をフッた女性。僕の流し目が効かないのは花龍ちゃんだけだよ……。

「あっ、チャイムが鳴るから、またね」

「はい……気をつけてお帰りください……」

 七音は背中に哀愁を漂わせながらも、やはりキラキラした笑顔で手を振った。


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