ポプリ
 二時間目の休み時間、もう一度中等部を訪れる。

 しかし琥珀の教室にはすでに人だかりが出来ていた。

「はいはい、琥珀ちゃんにチョコを渡す方は一列に並んでくださーい」

 メガホンを持ってショートカットの少女が呼びかけている。

「貴様ら、押すんじゃない、危ないではないか! そこ! 列を乱すな、他の生徒の迷惑になる!」

 刀を振り上げて怒鳴っているポニテ少年もいる。

 さくらと刹那は押し寄せてくる生徒たちに苦労している様子。人がいすぎて花龍の目の高さからだと他生徒のおしりしか見えず、琥珀がどこにいるのかすら分からない。

 休み時間が終わるまでには渡せそうにないな、と花龍は初等部校舎に戻っていった。





 お昼休み。

 学食へ行った後、また中等部に行ってみようと思っていると。

「花龍~」

 眉を八の字にしたシオンがやってきた。

「ん?」

 花龍はこてん、と首を傾げた。シオンは口を尖らせて両手を差し出している。そういえば今朝もこんなポーズを取っていたけれど、はて、なんだろう。

「ああ」

 ぽん、と花龍は手を叩いた。

「シオン、ご飯食べに行くの? 私も行くところだけど、一緒に行く?」

「うんうん、行く行く!」

 シオンは尻尾を振る勢いでついてきた。

 けれども、食堂で花龍はいちごみるく丼を、シオンは生姜焼き定食を頼んで一緒に食べ終わった後、「琥珀おねーさまのところに行くから、またね」と言ったら、みるみるうちにしゅーんと萎んでしまった。

 ……はて?

 首を傾げながら、花龍は中等部へ。


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