ポプリ
 教室に帰って次の授業の用意をしていると、机に突っ伏しているシオンが目についた。

 そういえば元気がない。どうしたんだろう。そう思っていると、彼の前の席の男子が、見せびらかすようにチョコを食べ始めた。

(学校で食べたらいけないんだけどな)

 と思って、そこで花龍はやっと気づいた。

 そういえばシオンにチョコを渡していない、と。


 まずは琥珀おねーさま。

 そしてあまり学校では顔を合わせることのない七音。

 仲のいい友達。

 優先順位がそうなっていたので、すっかりシオンのことを忘れていた。シオンはずっと傍にいるから、いつでも渡せると思っていたから。

(そっか、だから元気なくなったんだ)

 両手出して、期待して待っていたのに。






「ごめんね」

 放課後。

 花龍は手作りのチョコブラウニーが入った大きなピンクの袋を、シオンに差し出した。

「これは私からので、こっちが母上からのだよ。シンくんと野菊ちゃんと、勇者と姫と、それからシーちゃん(シルヴィ)とクーちゃん(クード)にも渡してね。みんなに早めに食べるように言ってね」

 大きな袋を受け取って、萎んでいたシオンがみるみる元気になっていく。

「うん、分かった! ありがとう!」

 ぱああ、と大きな花でも咲きそうな眩しい笑顔を見せてくれて、花龍もほっとする。

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