ポプリ
「にゃんにゃぁ~、にゃんにゃん。にゃんにゃんよー」

 孫が指差す先を見れば、白い子猫が庭を横切っていくところだった。

「にゃんにゃんではない。猫だ、猫」

「にぇーこぉ?」

「そう、猫だ。にゃんにゃんとは猫の鳴き声だ。わかるか?」

「にゃ」

 孫はこくりと頷く。

「にゃんにゃぁ~。にぇーこぉ、にぇーこぉよー」

「うむ、素晴らしい! よく理解した!」

 さすが我が孫! と龍娘は大仰に頷く。


 龍娘は、自分は『にゃんにゃん』ではない、と否定しない。

 異世界から来た者たちがその意味を知るはずも無いと思っていたから、最初の勇者たちには訂正するように何度も求めていたけれど。

 息子の嫁となったリィファは言ったのだ。

『にゃんにゃん(娘娘)とは……中国神話、道教、民間信仰の女神。皇后、母親、祖母の意味もあり、貴婦人や女神に親しみと尊敬を込めて呼ぶ場合に使う……。だから私は、尊敬する貴女を『にゃんにゃん』と呼んでいました……』

 なんだ、知っていたのか、と納得した龍娘は、それ以来その呼び名を受容した。……まあ嫁はともかく、その母親である姫が意味を理解していたかどうかは謎であるが。


「おーい、龍娘に花龍(ふぁろん)、お昼ご飯食べるぞー」

 窓からひょこっと顔を出した虎次郎を見て、孫がぱあっと顔を輝かせる。

「しーまちゃーん」

 ほわほわとした笑顔でそう言う孫。

 お祖父ちゃんは『しまちゃん』ではありませんよ、と突っ込むところだが。

「なんだぁ花龍ー? ほら、おてて洗って来いよぉ、母上のお弁当食べるぞぉ~」

 破顔させて蕩けそうな笑みを孫に向ける虎次郎に、呼び方など無問題。

「はぁい」

 素直に頷く孫に、めろめろな祖父母なのである。









 にゃんにゃん先生、しまじろう先生、いつもお世話になっています。




< 13 / 422 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop