ポプリ
「あれだけ好きだと言ってきたのに」

 毎日毎日、挨拶のように「花龍、好きだ」「愛してる」「一生一緒にいような」等、心の底から真剣に言ってきたのに。

 周囲の者たちだってそれには気づいていた。 幼い頃から仲良しだった二人が、ようやく新たな関係を築こうとしているのだなと、温かい目で見守っていたのに。まさか言われている本人が気づいていなかったとは。

「う、うん、でも、それは小さい頃からずっと言ってたし……」

「……まあ、そうだけど」

「それに好きだからお尻触らせろとか、胸揉ませろとか、普通にセクハラだし……それだって他の人にも言ってたでしょ?」

「そうだけど! でも花龍は違うんだよ!」

「どこが?」

 こてん、と首を傾げながら訊ねられて、シオンは言葉に詰まった。

 これには周囲の男子生徒たちが少し同情の目を向けていた。

 確かにシオンは挨拶代わりに女子たちのお尻やら胸やら体やら、軽くボディタッチする。それが驚いたことに、女子たちは口では悲鳴を上げたり文句を言ったりするものの、本当に嫌そうな顔はしないのだ。

 もう、仕方ないなあ、といたずらっ子を見るような目でシオンを見ている。

 これを他の男子がやったら非難轟々である。テメエふざけんなよ、警察と完璧超人先生と羅刹先生呼ぶぞ、レベルである。

 ではなぜシオンは赦されるのか。

 それは彼にまったく厭らしさがないからである。

「おはよー」と言いながらするりと尻を撫で上げる彼の顔も手も爽やかそのもので、まったく悪意を感じない。だから女子たちもつい、赦してしまう。

 それに対し、男子たちは羨望の眼差しを送っている。けれども嫉妬の目にはならない。それは何故か。

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