ポプリ
「花龍……俺と結婚してくれないか」
その漠然とした夢の中に、突如形を成して現れたのは、幼い頃からずっと一緒だったシオンだった。それだけに現実味を感じられなかったのだが、向かい合い、至近距離から見つめられれば嫌でも認識させられる。向けられる、鮮やかな好意に。
「っ……」
花龍は息を呑んだ。
今まで好きだ愛してると言われて平然としていられたのは、シオンは“そういう人”だと思っていたからだ。けれどもそこには確かな愛情があるのだと気づいてしまっては、流石に照れてしまう。そして今まで気づかなかった自分を恥ずかしく思い、周りのみんなが気づいていたという事実に頭を抱えたくなった。
「ええと……今まで、ごめんなさい」
取りあえずは鈍感過ぎて気持ちに気付けなかったことをシオンに謝ろうと、花龍は赤くなった顔を隠すように頭を下げた。
「いいよ。それで、返事は?」
「え?」
「プロポーズの、返事」
「え、い、今?」
「今」
こくり、とシオンが頷く。
花龍は顔を赤くしたまま周囲を見渡した。
もうほとんどの生徒が登校してきていて、クラスメイトたちはシオンと花龍のプロポーズの行方を見守っている。
初等部の頃から二人を見守ってきたクラスメイトたちだ。その結果を見守る目は真剣だった。
彷徨わせていた視線を前に戻せば、やはり真剣な顔で返事を待つシオンがいる。
真剣な想いには、真剣に応えなければならない。けれども花龍は突き付けられた現実にまだついていけていない。何か言葉を、と思って口を開けても、何も出てこない。
どうしよう。
焦るばかりで考えが纏まらない。そんな花龍に助け舟が出される。
「そんなに追い詰めたら駄目ですよ」
教室の開いたドアのところに立ち、穏やかな笑みを浮かべていたのは鳴海七音だった。
その漠然とした夢の中に、突如形を成して現れたのは、幼い頃からずっと一緒だったシオンだった。それだけに現実味を感じられなかったのだが、向かい合い、至近距離から見つめられれば嫌でも認識させられる。向けられる、鮮やかな好意に。
「っ……」
花龍は息を呑んだ。
今まで好きだ愛してると言われて平然としていられたのは、シオンは“そういう人”だと思っていたからだ。けれどもそこには確かな愛情があるのだと気づいてしまっては、流石に照れてしまう。そして今まで気づかなかった自分を恥ずかしく思い、周りのみんなが気づいていたという事実に頭を抱えたくなった。
「ええと……今まで、ごめんなさい」
取りあえずは鈍感過ぎて気持ちに気付けなかったことをシオンに謝ろうと、花龍は赤くなった顔を隠すように頭を下げた。
「いいよ。それで、返事は?」
「え?」
「プロポーズの、返事」
「え、い、今?」
「今」
こくり、とシオンが頷く。
花龍は顔を赤くしたまま周囲を見渡した。
もうほとんどの生徒が登校してきていて、クラスメイトたちはシオンと花龍のプロポーズの行方を見守っている。
初等部の頃から二人を見守ってきたクラスメイトたちだ。その結果を見守る目は真剣だった。
彷徨わせていた視線を前に戻せば、やはり真剣な顔で返事を待つシオンがいる。
真剣な想いには、真剣に応えなければならない。けれども花龍は突き付けられた現実にまだついていけていない。何か言葉を、と思って口を開けても、何も出てこない。
どうしよう。
焦るばかりで考えが纏まらない。そんな花龍に助け舟が出される。
「そんなに追い詰めたら駄目ですよ」
教室の開いたドアのところに立ち、穏やかな笑みを浮かべていたのは鳴海七音だった。