ポプリ
 翌日。

 花龍は落ち着かない気持ちで学校へ向かった。

 まだシオンへの返事が決まっていない。誕生日までにということは、夏休み前までには答えが欲しいだろう。もうあと一週間もない。

 それまでに答えは出るのだろうか。それまでにシオンとはどう接したら良いのか。

 少し緊張しながら昇降口に入って、ちょうど靴箱から上履きを出しているシオンに遭遇した。

「あ……」

 いつもならば笑顔で挨拶を交わすのに、それすら出来ない状態になっている。

 そんな花龍に気付いたシオンは、意識して元気のいい声を張り上げた。

「おはよう花龍、今日も暑いな!」

「う、うん、暑いね、おはよう……」

 ぎこちない花龍に、シオンはいつものように笑いかける。

「今日はまたテストだってさ。予習してきた?」

「うん、一応」

「今年は受験って言っても、どうせエスカレーター式に上がれるんだから、テストとかいいのにな」

「そういうわけにはいかないよ。外部受験する子だっているし……」

 ぎこちないながらも、いつものように並んで歩き出す。

 花龍はどことなく硬い口調だが、シオンはいつもとまったく変わらなかった。昨日のプロポーズを微塵も感じさせない自然な態度に、花龍は頭を下げたくなった。

 気にしないように、気を遣わせている。

 返事は今すぐにでも欲しいだろうに、我慢して待ってくれているのだ。

 考えなくては。

 ちゃんと自分がどうしたいのかを、シオンに伝えなくては。


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