ポプリ
 もしもミルトゥワに行くことになったとしたら。

 シオンはリザ=ユグドラシェル公家という、星を治める皇族家の一員だ。惑星王に何かあれば帝位につく可能性もある由緒正しい家柄。その家の跡取りの妻となるからには、それなりの素養が必要となる。

 シオンはあまり家のことを話さないので、同じユグドラシェルの血を引いているとはいえ、花龍はどういうことが必要なのかは知らない。

 知っているのは公務があることと、リザ家が皇家所有の古代遺跡の管理を任されているということだ。

 シオンの父であるシンは、よく妃である野菊を伴って遺跡探索をしているという。もしシオンと結婚すれば、花龍もそういうことをするのだろうか。彼との冒険は楽しそうだと、少しだけ胸が弾む。

 けれども公家としての役割はそれだけではないだろう。

 果たして自分に務まるのか。

 その不安は、シオンと一緒に乗り越えられるだろうか。


 ……出来そうな、気もする。

 けれど。

 それは幼馴染として、友人として、仲の良い自分たちでならきっと乗り越えられるという、信頼関係からだ。

 では恋愛の意味ではどうなのだろう。

 花龍はずっと考えている。けれどもシオンと同じ答えが出てこない。


 家族や友人たちに囲まれたこの環境で、シオンとそこに在ること。そして幼馴染の、兄妹のような関係でいること。その居心地のいい今の関係を壊したくない。

 何度考えてみても、どうしても、そこに行く着く。


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