ポプリ
 とうとう夏休み目前の、一学期最後の日となった。

 いつも通りの授業の後に終業式が体育館で行われ、そして通知表を手渡される。

 夏休みを心待ちにしていた生徒たちは、開放されたかのように明るい顔で教室を出ていく。シオンと花龍はその波に乗ることなく、二人だけ、教室に残った。

 開け放たれた窓からは夕日が差し込み、風を孕んでクリーム色のカーテンが揺れる。

 それを視界の端に捕えながら、花龍はシオンと向き合う。

 シオンはプロポーズのときと同じく、真っ直ぐに花龍を見つめていた。その深海色の瞳から逃げたくなりながらも、それでは駄目だと、花龍も見つめ返す。

「……あのね」

 意を決して話しかけると、シオンは穏やかな顔で頷いた。

「うん」

「私、やっぱり……シオンとは、結婚、出来ない」

 この五日ほど、寝る間も惜しんで考えた結果だった。

「シオンのこと、好きだけど。でも私は、シオンを家族みたいに思ってて……とても大切だけど、でも、違うの……」

「……うん」

 シオンは静かな顔で頷いた。あまりショックを受けている風ではなかった。プロポーズをしてからの花龍の悩む様子を見ていて、この答えを予想していたからだ。

 そんな彼の態度に、花龍は胸が痛んだ。

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