ポプリ
「殿下、今年も地球へおいでですか? ご友人との約束があるのでしたら、婚約の儀以外は調整致しますが」
「……ああ、いいよ、今年は。戻らないから」
「ファロン様との約束もないので?」
そこで茫洋としていたシオンの目に深い哀しみが現れた。
──ああ、ファロン様か。
彼の死んだ目の原因が分かり、エーリッヒもヴィルヘルムもほんの少し彼を憐れに思った。
そんな視線を受け流して、シオンは窓から見える穏やかな春の空を見上げる。そうしながら遠い地の、真っ青な青空の下にいるであろう少女を想った。
初めての公務である遺跡探索を、シオンは楽しみにしていた。
いつも父にくっついて古代文明の跡を巡ってはいたが、今回はその総責任者となる。気合を入れて事前に勉強していたし、探索メンバーのリーダーとも綿密に打ち合わせてきた。
それなのに。
肝心のメンバーとの顔合わせの日は、あろうことか部屋に入場した途端にコケてヴィルヘルムに驚きの表情をさせてしまったし、エーリッヒには「武人が躓いてコケるなど、あってはならないことですね。お仕置に串刺しに致しましょう」と、笑顔で本当に襲い掛かって来られたので、命の危機を感じて全力で逃げた。
遺跡探索自体は周りのサポートのおかげで無事に済んだが、準成人の儀では祝詞を間違えて神官長に睨まれるし、陛下とマリアベルとの謁見も上の空でほとんど話を聞いていなかった。
「……ああ、いいよ、今年は。戻らないから」
「ファロン様との約束もないので?」
そこで茫洋としていたシオンの目に深い哀しみが現れた。
──ああ、ファロン様か。
彼の死んだ目の原因が分かり、エーリッヒもヴィルヘルムもほんの少し彼を憐れに思った。
そんな視線を受け流して、シオンは窓から見える穏やかな春の空を見上げる。そうしながら遠い地の、真っ青な青空の下にいるであろう少女を想った。
初めての公務である遺跡探索を、シオンは楽しみにしていた。
いつも父にくっついて古代文明の跡を巡ってはいたが、今回はその総責任者となる。気合を入れて事前に勉強していたし、探索メンバーのリーダーとも綿密に打ち合わせてきた。
それなのに。
肝心のメンバーとの顔合わせの日は、あろうことか部屋に入場した途端にコケてヴィルヘルムに驚きの表情をさせてしまったし、エーリッヒには「武人が躓いてコケるなど、あってはならないことですね。お仕置に串刺しに致しましょう」と、笑顔で本当に襲い掛かって来られたので、命の危機を感じて全力で逃げた。
遺跡探索自体は周りのサポートのおかげで無事に済んだが、準成人の儀では祝詞を間違えて神官長に睨まれるし、陛下とマリアベルとの謁見も上の空でほとんど話を聞いていなかった。