ポプリ
夏休みが明けた、新学期。
いつものように制服に袖を通し、いつものように学校までの道を歩く。
そしていつものように昇降口に入ると、ちょうど靴箱の前で上履きに履き替えているシオンに逢った。幾人もの生徒たちが横を通り過ぎて行く中、無言で見つめ合う二人。
顔を見ただけで胸が痛い。
それでも一緒にいたい。だが一緒にいればきっと、この想いは捨てられない。
それでは駄目だ。離れるべきだ。
目を逸らして、足を動かして、背を向けて、立ち去らなければ。そうしなければ、いつまでも。
「……駄目だ」
シオンは溜息を付きながら項垂れた。
そして、顔を上げてもう一度花龍と視線を合わせ、笑みを浮かべた。
「おはよう。こっちは暑いな」
いつもの屈託のない、太陽のような笑みではなかった。今にも泣きだしそうな顔をしていた。
そんなシオンに、花龍も同じような笑みを向ける。
「……おはよう」
そう言って、泣きながら、笑った。
一緒にいるべきではない。
そう、解っているのに。
もう話さないとか、関わらないとか、そんなことは無理だ。……無理だった。
二人は歩き出した。
もう元には戻れないと思いながらも、大切過ぎるその場所を捨てることは出来なかった。それは、辛く、長い道のり。
ぎこちない関係はしばらく続いたけれど、時間が経つにつれて少しずつ心を痛めなくなって、自然に笑えるようになって、それでも好きだという想いだけは胸の中に残したまま。
高等部の入学式を迎える。
◇
シオンと花龍編、これにておしまいです。
高等部での二人が新しい恋を始めるのか、それともそうでないのか、気になる続きは本編にて(笑)
いつものように制服に袖を通し、いつものように学校までの道を歩く。
そしていつものように昇降口に入ると、ちょうど靴箱の前で上履きに履き替えているシオンに逢った。幾人もの生徒たちが横を通り過ぎて行く中、無言で見つめ合う二人。
顔を見ただけで胸が痛い。
それでも一緒にいたい。だが一緒にいればきっと、この想いは捨てられない。
それでは駄目だ。離れるべきだ。
目を逸らして、足を動かして、背を向けて、立ち去らなければ。そうしなければ、いつまでも。
「……駄目だ」
シオンは溜息を付きながら項垂れた。
そして、顔を上げてもう一度花龍と視線を合わせ、笑みを浮かべた。
「おはよう。こっちは暑いな」
いつもの屈託のない、太陽のような笑みではなかった。今にも泣きだしそうな顔をしていた。
そんなシオンに、花龍も同じような笑みを向ける。
「……おはよう」
そう言って、泣きながら、笑った。
一緒にいるべきではない。
そう、解っているのに。
もう話さないとか、関わらないとか、そんなことは無理だ。……無理だった。
二人は歩き出した。
もう元には戻れないと思いながらも、大切過ぎるその場所を捨てることは出来なかった。それは、辛く、長い道のり。
ぎこちない関係はしばらく続いたけれど、時間が経つにつれて少しずつ心を痛めなくなって、自然に笑えるようになって、それでも好きだという想いだけは胸の中に残したまま。
高等部の入学式を迎える。
◇
シオンと花龍編、これにておしまいです。
高等部での二人が新しい恋を始めるのか、それともそうでないのか、気になる続きは本編にて(笑)