ポプリ
 高等部一年となったシオン。

 彼は幼い頃から城に勤める騎士たちとともに朝稽古をしているのだが、高校生となった今でもそれは変わらない。

 長距離の走り込みの後、シオン専属の近衛騎士、ヴィルヘルムを相手に剣を振るい、軽く汗を流す。

 なんでも器用にこなすシオンは、リザ家の城でナンバー3のヴィルヘルムを相手にしてもそこそこやり返す。

 ヴィルヘルムは、シオンはもっと伸びると思っているのだが、何でも器用にこなしてしまう弊害なのか、シオンはいつも“そこそこ”だ。努力している姿をあまり人に見せないタイプで、コツコツと鍛錬を積み重ねてはいるのだが、まだまだ本気が感じられない。

 それで花龍との関係もうまくいかなかったというのに、本人は恐らく気づいていない。

 幼い頃から魔族と戦ってきた祖父、そして星を渡る旅をしていた父と比べてしまうのは酷というものなのだろうが。彼には何かが足りないのだ。

 何かきっかけがあれば爆発的に伸びるかもしれないのだが。

 そんな風に近衛騎士に思われているとは知らず、シオンはいい汗をかいたと鍛錬場を後にする。



 今日は父も母も公務でいない。同じく女性騎士たちと朝稽古しているはずのシャンリーと合流してご飯にしよう、と思いながら歩いていると、前方から護衛を幾人も引き連れたマリアベルがやってくるのが見えた。頬を紅潮させて、何やら嬉しそうである。

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