ポプリ
「それがですね、シオン様。夕べ、兄上様とお会いしまして」

「おう」

 やっぱりそんな話だと思った。

 シオンは笑顔で頷きながら、ステーキを食べるためにナイフとフォークを手にする。

「北の大陸にあるメツィオ王国の建国祭に招かれた際、わたくしのために髪飾りを求めてきてくださったのです」

 頬を染めて嬉しそうに語るマリアベルの紺色の長い髪には、それだと思われる蝶の形をした髪留めが飾られていた。

「良かったな、似合ってるよ、それ」

 それで嬉しくてわざわざ朝一で言いに来たのか。他の人には話せないものな、とシオンは微笑ましく彼女の話に耳を傾ける。

「話は出来たのか?」

「はい。メツィオ王国のお話をたくさん。王国の北方には珍しい管楽器がありまして、とても優しい音色なのだそうです。わたくしも聞いてみたいと申しましたら、今度行くときにははわたくしも同行すれば良いとおっしゃって」

「そうか」

 シオンは切り分けたステーキを口に放り込み、この肉うまい、と思った。あとでおかわりしよう。

「それから……アイシャ様のことも、少し」

「あー」

 肉を咀嚼しながらシオンは苦笑した。

 アイシャとは、皇太子の婚約者の名前だ。

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