ポプリ
 家のドアを開けると、スーツ姿の両親がいた。なんでも急な任務が入ったとかで、しかし速攻で終わらせて帰ってきたところらしい。

「せっかくお前たちに会える休みだってのに、潰されてたまるかっての。はぁ、でも疲れた」

 そう言ってネクタイを緩める父、覇龍闘を、花龍はうっとりと見つめる。

 幼い頃のように、父上のお嫁さんになる、なんてことはもう言わないが、それでも父はカッコいいと思う。

 ネクタイを緩める骨張った手と、疲れたと言いながら見せるほんの少しの憂い顔。同級生にはない、大人の色気がある。

 花龍がにこにこしながら父を見ていると、弟がとてとて駆け寄って行った。

「父上、ばんばんしてきたのか?」

「おう、ばんばんしてきたぞー」

 麗龍の質問に、人差し指を銃に見立てて、撃つ真似をしてみせる覇龍闘。そんな父を「おおー!」と、目を輝かせて見る麗龍。

 マテバを撃つ父はカッコいいが、両親の仕事は極秘任務が多いため、あまり多くは語れない。

 麗龍が銃に興味を持ちつつも中国拳法を嗜むのは、こういう事情と、毎日接する祖母の影響からなのかもしれない。


 微笑ましい父と子のやり取りを見ていると、母がエプロンをしながらキッチンへ入って行った。

「あ、手伝うよ」

 花龍もウサギ模様のエプロンを取り、母を追う。

「ありがとう。じゃあ、野菜を洗ってくれる……?」

「うん」

「メインはもう出来てるから、あとはサラダだけなの」

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