ポプリ
 リィは鍋に火をつける。優しいコンソメの香りはきっとポトフだ。冷蔵庫には昨日のうちに作っておいたローストビーフと、超甘党三人がいる早川家ではある意味これがメインディッシュ、ガトーショコラも入っている。

 母はいつも仕事の合間を縫って食事を作ってくれるのだ。

 手際よく動く母を、チラリと盗み見る。

 ふわふわのハニーブラウンの髪は下ろせば背中まである長さなのだが、今は捻り上げて無造作に留めてある。

 そこから覗く白い頸、華奢な肩、折れそうに細い腰。なのにしっかり膨らんで存在を主張する胸と、二十代と言っても通用する形の良いお尻。

 これぞ黄金比率。まさに理想的なプロポーション。

 これで家庭的で仕事も出来て子供たちに優しいのだから、うちの母は完璧超人だと花龍は思う。

「……どうしたの?」

 視線を感じたのか、こてん、と首を傾げる母。

 かわいい。

「ううん」

 花龍は微笑みながら首を振る。

 カッコいい父とかわいい母は、花龍の自慢だ。


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