ポプリ
 未熟なれど、これから努力する。

 シオンは更に鋭く父を睨めつけた。

 その強い視線を受けて、シンは面白そうに笑った。

「ならまずはヴィルからだ。次にエーリッヒ。彼らに勝てたら稽古をつけてやる。リザ公家の跡取りが他の者に後れを取るなど許さない。それでは護るべきものが護れない」

 約束を取り付けられた。

 シオンは緩みそうになる頬を押さえつけ、頭を下げた。

「肝に銘じます」

 そして、執務室を出て行く。

 その後ろ姿を、シンは、そして野菊は、頼もしそうに見送る。




 執務室を出て歩いていると、見覚えのある紺色の長い髪を見つけた。今日もたくさんの護衛に囲まれた皇女殿下。

「マリアベル」

「シオン様、ごきげんよう。今日もまた遊びに来てしまいました。ノギク様とシャンリー様に庭園を案内していただく約束なのです」

「ああ、そうなのか。母上なら父上の執務室にいる。……マリアベル」

 シオンは彼女の細い肩に両手を乗せ、真っ直ぐに紫暗色の瞳を見下ろした。

「俺が、お前をしあわせにしてやる」

「えっ……」

 目を丸くするマリアベルに、シオンはにいっと笑う。

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