ポプリ
「俺がお前を皇太子妃にしてやる。必ずだ。少し時間はかかるけど、待っていろ」

「そ、そんなこと、シオン様……」

 出来るわけがない、とマリアベルは頭を振るが。

「諦めるなって言ったのは、マリアベルだぞ」

「そうですが……! 神殿を動かすなど」

「まあ、色々と面倒だよ。神殿のおかげで先帝、カイン太上皇の命が守られていたからな。今も皇族は神殿に守れているし、だから俺たちは神殿に頭が上がらない。だからってここまで神殿の好き放題にさせていいはずがない。皇族は民のために存在するけど、その心まで縛られる必要はない。星のための奴隷でなんかいたくない。……限られた中で生まれた尊い想いを、捻じ曲げたりなんかさせないから」

「シオン、様……」

「マリアベル、どうする。どちらにせよ俺は動く。他の皇族のためにも、これからの皇族のためにも。……マリアベル。お前は、どうしたい?」

 シオンを見上げていたマリアベルは、その目にうっすらと涙を浮かべた。

「わたくしは……わたくしは、兄上様とともに、この星を、見守りとうございます……!」

 喉の奥から絞り出すように出たマリアベルの心からの声。

 シオンは彼女の肩をぽん、と叩いた。

「任せとけ」

 そうして、歩き出す。


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