ポプリ
「あれ、シオン様」

 皇立古代遺跡研究所。皇城の敷地内にあるこの施設は、シオンの職場のひとつでもある。そこで金髪の太い三つ編みと琥珀色の目をした少女に声をかけられた。

「この間の発掘物の調査報告書はお城にお送りしましたよ?」

 そう言う少女が分厚い蔵書を何冊も重ねて持っていたので、シオンはそれを奪い、彼女の進行方向へと歩き出した。

「ちょっと気分転換。リコリス、これは資料室か?」

「いえ、私の机に。今古代文字の解読をしているんです。ってかすみません運んでいただいて!」

「いいよ別に。へえ、読めたの?」

「まだまだ分からないところだらけですけれどね。一文字分かればするすると解けてくるんです。それがまた面白くって。あの設計図が読めるのもそう遠くありませんよ」

「それは凄い。引き続きよろしく頼む」

「はい、お任せください!」

 どん、と薄い胸を叩いてリコリスは頷く。

 彼女、リコリス=ヴァイゼルークはシオンが初めての公務に挑んだときからの遺跡探索チームの仲間だ。そして、

「リコがうるさいと思ったら、シオンが来てたのか」

 研究所の廊下に設置されていた長椅子に腰かけ、足を組んで偉そうに座っている碧色の髪の少年も、同じチームの仲間だった。彼の白く細い首には、綺麗な碧色の鱗が微かに見える。竜の鱗だ。

 レヴェントの母親はシルヴィなのだ。拾ってきた子なので彼は古代竜ではなく、風竜であるが。

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