ポプリ
「君、今日は学校じゃないの」

「今日は日曜だから休み」

「ふーん。休みの日なのに婚約者は放っておいていいの? 仲良くしておかないと煩い連中がいるんじゃない?」

 レヴェントの言葉に、リコリスもこくこくと頷いている。

 シオンは頬を掻いた。

「あー。婚約、なかったことにするからさ」

 そう言ったら、二人とも目を丸くした後、絶叫のような大声を上げた。

「そんなこと神殿のヤツラが許すわけ?」

 神殿への不信感を露わにするレヴェント。

「それを何とかするためにはどうしたらいいか、今考えてるところなんだよ」

「な、何故そんなことを?」

 リコリスも驚きながら訊く。

「マリアベルを皇太子妃にしようと思って。アイツはずっと皇太子が好きだったんだ」

「ま、マジですか」

「うん」

 リコリスはワナワナと震えていたが、やがてくるりと背を向け、ぐっと握りこぶしを作った。

「やっべぇ、お互いに他に好きな人がいるのに婚約させられるってシチュエーションだけでも萌えるのに、でもシオン様はマリアベル様のために婚約を破棄。自分には何の得もないのに! しかも敵対勢力(?)を粛正とか! くあああ、何それカッコイイ、さすが私の王子様、萌えすぎて鼻血でるわ!」

 ブツブツと小声で呟いているが丸聞こえだ。レヴェントが胡乱な目で彼女を見ている。しかしシオンはそれに対しては無反応。彼女の変態ぶりは今に始まったことではない。

「というわけで、何かいい方法がないか探してるんだけど」

「そんなの、簡単でしょ」

 レヴェントがふん、と鼻を鳴らした。

「意地汚い人族のことだ。何か弱みを見つけてやればいいんだよ」

「……弱み、ねえ」

 シオンはふうむ、と考え込んだ。



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