ポプリ
 某月某日。

 お山の上の鴉丸の城に、元気な産声が響き渡った。待望の跡取りの誕生に、鴉丸の者たちは湧き上がる。

 何より喜んだのは、

(ハゲてない!)

(ハゲてないよ!)

(ふっさふさ!)

(見事な黒髪!)

 鷹雅が生まれたときにはあった小さなハゲが、頭のどこにもなかった。それどころか、生まれたばかりだというのに見事にふっさふさの黒髪が生えていた。

「遊里!」

 鷹雅が感極まって、生まれたばかりの娘ごと妻を抱きしめた。それもこれも毎週のように天神温泉に付き合ってデリケートゾーンをマッサージしてくれた遊里のおかげだ(たぶん)。ありがとう、妻よ! てな具合に鷹雅感動中。

「よくやった遊里! 疲れただろ? 何か食うか? ぽっきーか? あいすくりんか? それともけぇきか?」

 ツンのない優しさを見せる珍しい鷹雅。

 そこに家族がドドドと押し寄せる。

「いやぁ目出度い! お前は素晴らしい嫁じゃ、長年鴉丸を苦しめた呪いを吹き飛ばすとは!」

 飛燕じいちゃん、感極まって涙する。

「人間なぞと思っていた俺は恥ずかしい! 半妖がなんだ、こんなにかわいくてハゲてない娘子をよく産んでくれた! ありがとう!」

 孔雀パパも大泣きだ。

 ハゲてない子孫が生まれてきた、この喜びがお前には分かるか、いや、分かるまい。てな具合に感動中。



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