ポプリ
「君は武力に優れた勇者殿の血縁。もちろん、君も強いはずだ」

「まあ、あんたよりは動けると思うよ」

「ならばやはり君に頼もう。最高神祇官の邸宅にある寄付金横領の証拠を持ってきてくれないか」

 最高神祇官。神殿側の最高責任者だ。惑星王でさえ一目置くという、白い髭を蓄えた優し気な風貌の狸爺。

「……あの家セキュリティ物凄いんじゃね」

 警備の数もさることながら、魔道具を使った罠も張り巡らされているだろう。権力者の邸宅は大抵そうだ。

「当然。しかし遺跡探索で培った危機察知能力があればなんとか出来るだろう」

「鬼だな、あんた」

「時には鬼になる必要もあるということだよ。それで……出来るのかい?」

 皇太子の問いに、シオンは口角を上げた。

「誰に物を言ってんだよ」





 一週間後。

 少し危ないところはあったが、無事に証拠の巻物を盗み出したシオンは、まず父に報告。そして怒られた。

「盗み出した証拠で不正が暴けるかあー! 逆に侵入罪で訴えられるぞこのド阿呆があああ!!!!」

 そういえばそうか、と皇太子に乗せられたシオンはちょっとむくれた。

 しかし、父からはお叱りと同時に分厚い書類を投げ渡された。

「……これは」

「正規のルートから入手した不正の証拠だ」

 シンたち五公家当主、そして惑星王ルドルフは、神殿との関係を打開するタイミングを伺っていた。そうしてシオンが動き出したことに気付き、裏で色々と手を回しておいたのだ。

 甘いのかもしれない。

 けれどもこれは親として、運命に抗おうともがく子どもたちへ贈る餞別でもあった。

「最高神祇官には手を出すな。あれをつつくとヘビが出てくるんだ。その下の神祇官を落とし込め。皇太子たちにも同じものを送っておく。……全員で気合入れて殴り込めよ?」

 にっと笑う父に、シオンは顔を輝かせる。

「ありがとう“父さん”!」



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