ポプリ
小岩井紗雪は、死神の父と雪女の母を持つ妖である。
母譲りのアイスブルーの長い髪はポニーテールに。そして瞳は鋭くも美しい輝きを放っている。それは人を魅了する美貌で男を惑わし、魂を喰らうと言われる雪女そのものの姿だった。紗雪はそんなことはしないけれど。
彼女の朝は早い。まだ陽も昇らぬ早朝から起き出して、きちんと布団を畳んで襖を開ける。
「おはようございます、母上」
用務員室の畳の上で、三つ指をついて挨拶をする紗雪。
ちなみに用務員室は、さすがに四人では狭いだろうと、学園長やお初さんのご好意でもう一部屋増やしてもらいました。
「おはようございます、紗雪ちゃん」
にこにこにっこり、今日もほのぼのオーラを放っている母の雪菜は、タスキで白い着物の袖をまくり、朝餉の準備に取り掛かっていた。
「今日の朝餉は五穀米のご飯に、具だくさんのお味噌汁、焼鮭に大根おろしのシラス乗せが良いかなぁと思うんですけど、どうです?」
「うむ、おいしそうで良いのじゃ。大根には大葉も欲しいな。庭から摘んでこよう」
「ありがとう紗雪ちゃん、助かります」
「それから母上、アレを忘れてはならぬぞ」
「分かっていますよ、アレですね」
「うむ、あれじゃ」
雪女二人は心を通じ合わせて頷く。
「カキ氷、苺シロップ、練乳多めで」
夏とはいえ、朝からカキ氷か。
しかし突っ込みは誰からも発せられることのないまま、紗雪は庭──学校の中庭に勝手に作った家庭菜園──から大葉を摘み取り、用務員室に戻る。
母譲りのアイスブルーの長い髪はポニーテールに。そして瞳は鋭くも美しい輝きを放っている。それは人を魅了する美貌で男を惑わし、魂を喰らうと言われる雪女そのものの姿だった。紗雪はそんなことはしないけれど。
彼女の朝は早い。まだ陽も昇らぬ早朝から起き出して、きちんと布団を畳んで襖を開ける。
「おはようございます、母上」
用務員室の畳の上で、三つ指をついて挨拶をする紗雪。
ちなみに用務員室は、さすがに四人では狭いだろうと、学園長やお初さんのご好意でもう一部屋増やしてもらいました。
「おはようございます、紗雪ちゃん」
にこにこにっこり、今日もほのぼのオーラを放っている母の雪菜は、タスキで白い着物の袖をまくり、朝餉の準備に取り掛かっていた。
「今日の朝餉は五穀米のご飯に、具だくさんのお味噌汁、焼鮭に大根おろしのシラス乗せが良いかなぁと思うんですけど、どうです?」
「うむ、おいしそうで良いのじゃ。大根には大葉も欲しいな。庭から摘んでこよう」
「ありがとう紗雪ちゃん、助かります」
「それから母上、アレを忘れてはならぬぞ」
「分かっていますよ、アレですね」
「うむ、あれじゃ」
雪女二人は心を通じ合わせて頷く。
「カキ氷、苺シロップ、練乳多めで」
夏とはいえ、朝からカキ氷か。
しかし突っ込みは誰からも発せられることのないまま、紗雪は庭──学校の中庭に勝手に作った家庭菜園──から大葉を摘み取り、用務員室に戻る。