ポプリ
 リザ=ユグドラシェル邸の、人払いされた執務室。

 何故かカーテンの引かれた薄暗い室内にて、向かい合うソファに座り、真剣な面持ちで見つめ合う者、二人。

 一人は燃えるような赤い髪に、深い海の色の瞳を持つ精悍な青年、リィシン=リザ=ユグドラシェル(旧姓グリフィノー)。

 そしてもう一人は、濡羽色をした短い髪に翡翠色の瞳を持つ小さな少年、早川麗龍だ。

 何やら剣呑な雰囲気を漂わせて向かい合っている二人。

 しかし雰囲気を漂わせているだけで、二人ともテーブルに置かれたシン特製の仙豆(という名のおからクッキー)や、麗龍が持参したリィ手製の苺タルトなどのお菓子を摘まんだり、お茶を飲んだりしてまったりしているのだが。

「報告を」

 シンが低い声で訊ねると、麗龍はあむあむとタルトを穂張りながら頷いた。

「橘リゾートで、シャンリーはリプニー先生の胸を揉んだり持ち上げたり添い寝したり水着のヒモ外したり揉んだりしてた。あと、紫陽花ちゃんと破廉恥ビキニ選手権を開いたりしてた」

 甘菓子を頬張りながらも、瞳を鋭くして麗龍がそう報告すると、シンはガクリと項垂れた。

「やっぱりそうか……。アイツはなんであんなに破廉恥に育ったんだ……学校にもちゃんと制服を着ていけって言ってんのに、ビキニアーマーとか着ていくし」

 娘がお父さんの言うことを聞いてくれないと、シンはリィの手製タルトを口に放り込みながらボヤいた。

「一応俺からも注意しといたぞ」

「ありがとな」

 麗龍に礼を言い、シンは仙豆を勧める。麗龍は遠慮なしに仙豆を頬張った。

 そんな甥っ子のハムスターみたいに膨れた頬を見ながら、シンは溜息。

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