ポプリ
「なあああ! ちっ、ちみは“れでぃ”にたいして、なんということをしゅるんでしゅかぁっ」
興奮して『ちみ』とか言っちゃってるのがかわいい七音が、シオンに怒鳴っている。
「花龍はおれの嫁だから、ちゅーくらいフツーだよ。ねぇ?」
「花龍ちゃんは、ぼくのおよめしゃんになるんでしゅー!」
興奮して喋り方がちょっと幼児返り──いや、彼は間違いなく幼児の真っ只中だが──している七音が、今度は花龍の手を引っ張ってぎゅうっと抱きしめた。
「あっ、七音! おれの嫁になにすんだ!」
「花龍ちゃんは、ぼくのおよめさんでしゅ!」
今度は七音が花龍の頬にぶちゅー。それを見たシオンが七音ごと花龍を抱きしめ、反対の頬にぶちゅー。
互いに『俺の嫁』と言って引き下がらないので、間に挟まれた花龍は揉みくちゃだ。リィの視線が今度は琴音に突き刺さる。
「せ、責任は取らせますわ!」
「取らなくていい……!」
親たちがそんなやり取りをした、次の瞬間。
「ふ、ふぇ、ふぇえええええん」
あまりの乱暴さに、花龍が泣き出した。
ビックリしたシオンに七音、慌てて花龍を放す。
「ふぇええええん」
花龍は泣きながら母の元へ走り、その膝に飛びつく。
「ははうえぇ、わたしね、ちちうえとけっこんするのぉー。だから、シオンも七音も、やー」
母の膝で泣きながら、花龍は言った。
その発言にショックを受けるシオンに七音。どうやら途中からままごとではなく本気だったらしい。
「う、うわああん、かあさま、ぼく、はじめて女の子にフラれましたぁああー」
七音はわんわん泣き叫び、シオンは浮かんできた涙をぐしぐしと手の甲で拭った。
「花龍のちちうえにけっとうを申し込む! いくぞ、らんすろっとぉー!」
と、野菊の近くに置いておいた二刀のダガー『プティ・ランスロット』を手に、少し離れたところでシンと組手をしているはずの霸龍闘の元へ向かった。──まあ、結果は火を見るより明らかだが。
初恋は、実らないものである。
◇
子どもの頃は、こんなやり取りをしても許される。……たぶん。
興奮して『ちみ』とか言っちゃってるのがかわいい七音が、シオンに怒鳴っている。
「花龍はおれの嫁だから、ちゅーくらいフツーだよ。ねぇ?」
「花龍ちゃんは、ぼくのおよめしゃんになるんでしゅー!」
興奮して喋り方がちょっと幼児返り──いや、彼は間違いなく幼児の真っ只中だが──している七音が、今度は花龍の手を引っ張ってぎゅうっと抱きしめた。
「あっ、七音! おれの嫁になにすんだ!」
「花龍ちゃんは、ぼくのおよめさんでしゅ!」
今度は七音が花龍の頬にぶちゅー。それを見たシオンが七音ごと花龍を抱きしめ、反対の頬にぶちゅー。
互いに『俺の嫁』と言って引き下がらないので、間に挟まれた花龍は揉みくちゃだ。リィの視線が今度は琴音に突き刺さる。
「せ、責任は取らせますわ!」
「取らなくていい……!」
親たちがそんなやり取りをした、次の瞬間。
「ふ、ふぇ、ふぇえええええん」
あまりの乱暴さに、花龍が泣き出した。
ビックリしたシオンに七音、慌てて花龍を放す。
「ふぇええええん」
花龍は泣きながら母の元へ走り、その膝に飛びつく。
「ははうえぇ、わたしね、ちちうえとけっこんするのぉー。だから、シオンも七音も、やー」
母の膝で泣きながら、花龍は言った。
その発言にショックを受けるシオンに七音。どうやら途中からままごとではなく本気だったらしい。
「う、うわああん、かあさま、ぼく、はじめて女の子にフラれましたぁああー」
七音はわんわん泣き叫び、シオンは浮かんできた涙をぐしぐしと手の甲で拭った。
「花龍のちちうえにけっとうを申し込む! いくぞ、らんすろっとぉー!」
と、野菊の近くに置いておいた二刀のダガー『プティ・ランスロット』を手に、少し離れたところでシンと組手をしているはずの霸龍闘の元へ向かった。──まあ、結果は火を見るより明らかだが。
初恋は、実らないものである。
◇
子どもの頃は、こんなやり取りをしても許される。……たぶん。