ポプリ
 押し上げられたピアノは、そっと優しく屋上に下ろされる。シオンの力強さと花龍の繊細さを合わせた見事な召喚術だった。

「よし」

 シオンと花龍が顔を見合わせ、小さくハイタッチする姿を見ていた七音は、穏やかに目を細めた。

「……仲良くやれているようですね」

 去年はずっと、ぎこちなく見えていた二人だけど。

 今年に入ってから……特に二学期になってからは、昔のように気兼ねなく、友人として過ごしているように見えた。

 七音の言葉に振り返った二人は、チラリと互いの顔を見やり、そして笑みを浮かべる。

「うん」

 満面の笑みだ。

 色々あったけれど、二人とも穏やかな時間を過ごせるようになったのなら、七音にとっても嬉しいことだ。

「楽器、運んでくださってありがとうございます。今日はお二人のために演奏しますよ」

 七音は美しい微笑みを二人へ贈り、そして屋上への階段を上っていった。

 やがて七音の背を見送ったシオンと花龍の耳にオーケストラの演奏が届く。それは新たな道を歩き出したシオンと花龍の背中を押すように、力強く響き渡った。











 良い関係を築けている様子のシオンと花龍に、七音も嬉しくなりました。





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