ポプリ
「何をしようとしていたの?」

「え、えっと……」

 例え行動が筒抜けであっても、指に傷をつけて血を垂らそうとしていた、などと言いにくく、花龍は口籠る。

 リィは目を鋭くしながらも、花龍の手を優しく包み込んだ。

「花龍、こんなことはしては駄目」

「……はい」

「人を呪うのは、良くないことだよ」

「……え?」

 一瞬何を言われたのか解らなくて、花龍は目を瞬かせた。

「……その昔、魔女と呼ばれる人たちは自分の血を使って魔術を行使していたそうだし、貴女の血にも魔力が流れているから、似たように魔術は施せるかもしれない。でもね、それを悪いことに使っては駄目」

「え、あの」

「誰を、呪おうとしていたの? ……最近、孔雀のところの紅葉くんと言い争うことが多いみたいだけれど……だからって、呪っては駄目だよ」

「う、うん、あの」

「紅葉くんも、根はいい子なの。正面から向き合ってみれば、全てではなくても分かり合える部分はあると思う」

「うん……」

「だから、そんなことをする前に、きちんと話し合う努力をして」

 ぎゅっと手を握られながらそう言われて、花龍は戸惑いながらも頷いた。

「うん、分かった。母上の言うことはちゃんと心に留めておくね。でも、違うの」

「違う?」

 リィはこてん、と首を傾げた。

「あの……あのね、これは、ヴラド先生に、あげようと思って……」

 リィはこてん、と首を傾げたまま、じっと花龍を見ていた。だが見ているようで、これは見ていない。ちょっと考え込んでいるポーズである。それを花龍は知っていたので、しばらく手を握られたまま母の反応を待つ。

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