ポプリ
 今年もやってきた、御三家による冬の新年会。

 主催を務める柊家当主は、夕城善・花音夫妻に紹介された小さな少女を見下ろしていた。

 大きなうさぎのぬいぐるみ・綾小路を抱きしめ、まん丸な黒目を上目遣いにし、ぷるぷる震えている幼子。

(なんと)

 真吏は危機を覚えた。

(遺伝子とは恐ろしい。花音にそっくりではないか)

 彼らの第一子、武は夕城分家の跡取りとしてしっかり育てられているのか、幼いながらも気骨ある武士に違いないと感じさせてくれたものだが、この小さなものは。

 誘拐。

 いたずら。

 ストーカー。

 そのあたりの単語が真吏の脳裏を掠めた。

 いかん。このぷるぷる族は危険だ。

(柊の私設部隊を夕城邸に配備させるか……)

 真面目な顔でそんなことを考えていた。

 そしてそれを見上げる花は。

(こ、こわいよおおおお、おにいさま、たすけてぇえええー)

 綾小路をぎゅっと抱きしめ、うさぎのごとくぷるぷる震えていた。

 柊家当主は、心配事をしていると顔が怖いらしい。










 花音にそっくりな花ちゃん。






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