ポプリ
マリアベル姫と一緒になれば苦労はなかった。スリーサイズも雰囲気も花龍と同じの優しい姫ならば、兄を任せても良いと思っていた。
けれども一途で頑固な兄の心は、彼女では動かなかったらしい。
動かしたのはリプニーだ。彼女は兄の本当の笑顔を取り戻してくれた。そんな人を逃がすわけにはいかない。けれど。
それでもどうにも出来なくて、兄は悩みながらもいつもと変わらない明るい笑顔を貫き通すのだろう。
誰も不幸にはしたくないから、人のためにはすぐに動くのに、自分のことは後回し。
兄はきっと、自由になりたいとは、自分からは絶対に言わない。
妹に全て背負わせることになると解っているから。
だからシャンリーは剣を取る。
「武に秀でたリザ家に相応しく、私は兄上を討ち倒し、その座を手に入れて見せます。さあ、闘技場にお越しください」
「待て、シャンリー。それは父上も知っている話か」
シオンが椅子から立ち上がり、訊いてくる。
「もちろん、父上の許可は取っています。勝利した方にリザ家を継がせるとのお言葉も頂きました」
「マジか」
シオンは頭を抱えた。
そうして、太陽色の髪の毛をくしゃりと掻き混ぜながら更に訊ねた。
「シャンリー、リザ家の当主になりたいのか。グリフィノーではなく」
「ええ」
「それは自分の意思か」
「もちろんです」
「……自由は、なくなるぞ」
「自由と引き換えにしても、手に入れたいものが出来ました」
けれども一途で頑固な兄の心は、彼女では動かなかったらしい。
動かしたのはリプニーだ。彼女は兄の本当の笑顔を取り戻してくれた。そんな人を逃がすわけにはいかない。けれど。
それでもどうにも出来なくて、兄は悩みながらもいつもと変わらない明るい笑顔を貫き通すのだろう。
誰も不幸にはしたくないから、人のためにはすぐに動くのに、自分のことは後回し。
兄はきっと、自由になりたいとは、自分からは絶対に言わない。
妹に全て背負わせることになると解っているから。
だからシャンリーは剣を取る。
「武に秀でたリザ家に相応しく、私は兄上を討ち倒し、その座を手に入れて見せます。さあ、闘技場にお越しください」
「待て、シャンリー。それは父上も知っている話か」
シオンが椅子から立ち上がり、訊いてくる。
「もちろん、父上の許可は取っています。勝利した方にリザ家を継がせるとのお言葉も頂きました」
「マジか」
シオンは頭を抱えた。
そうして、太陽色の髪の毛をくしゃりと掻き混ぜながら更に訊ねた。
「シャンリー、リザ家の当主になりたいのか。グリフィノーではなく」
「ええ」
「それは自分の意思か」
「もちろんです」
「……自由は、なくなるぞ」
「自由と引き換えにしても、手に入れたいものが出来ました」