ポプリ
 シンとリィは視線を交わらせ、微笑み合った。

 それが、合図。

 シンは炎を纏わせたアストレイアを薙ぎ払い、リィはそれを避けて宙に飛び上がり、一回転しながら鋭い氷柱をクローリスとヴィオラから撃ち出した。

 飛んでいく氷柱の銃弾は周りの空気を凍てつかせながらシンに襲い掛かる。

 シンは光速で飛んでくるそれを、軽くアストレイアを一振り、二振りして叩き落した。次々に撃ち出される氷の礫を炎の剣が叩くたび、眩い火花が散る。

 その美しさに観衆が見惚れる。

 そうして何度か氷の礫を叩き落したシンは、少し悪戯っぽい笑みを浮かべた。

 派手に行こうぜ。

 そんな台詞が、その顔から読み取れた。

 そんな兄を見て、リィもクスリと笑う。確かにこれは観衆たちに皇族の力を見せつけ、この絶対的な力に護られているのだという安心感を与えるための演武であるから、“魅せつける”必要があるだろう。


 シンが高く飛び上がる。

 纏った剣の炎が一層大きく燃え上がり、障壁の張られている向こう側にいるはずの観客たちがその圧力に仰け反った。

「ディアトレコーン・アステール!」

 シンがアストレイアを一閃。

 大音響の爆発音とともに、剣から巨大な隕石が雨のようにリィに降り注いだ。

 観衆がはっと息を呑み、席を立ち上がる者もいる中、リィは冷静に引き金を引く。

「……天花乱墜(てんげらんつい)」

 二挺の魔銃から乱れ撃たれる氷が、光を乱反射させながら降り注ぐ隕石を撃ち抜き、一瞬にして崩壊させる。

 砕け散った隕石は火花を散らし、そして氷はその赤い光を受け、眩い光を放つ。

 その赤い光たちは地面に落ちる前に凍り付き、結合し、可憐な花のようになって白い地面で咲き誇った。

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