ポプリ
 そこへ、本物の花が空から舞い落ちてくる。

 花の精霊、ミンミンの女王が来場者へ振る舞う花嵐。それはこの演武を最上段から見守っていた惑星王、ルドルフ=アリスィア=ユグドラシェル皇帝陛下からの贈り物だった。

「ミルトゥワの平和が、この花を見る者たちの笑顔が、永劫に続くように。祈りを捧げよう」

 穏やかな声とともに、演武会は終わりを告げる。





「また強くなったんだね」

 演武が終わった後の、コロシアムから城内へと続く回廊。

 太陽の光を惜しみなく受け、美しく輝く庭を眺めながら歩くリィは微笑む。

「お前こそ。その調子じゃ、仕事の方も心配なさそうだな」

 黒い軍服の詰襟を緩めながら、シンも微笑みかける。

「覇龍闘がいるから、大丈夫だよ。シンはうっかり迷宮の罠に引っかかったりしないようにね。野菊ちゃんの言うこと、ちゃんと聞いてね」

「分かってるよ、心配すんな」

 警備兵が等間隔に立つ回廊を、ゆったりとした歩調で進んでいくと、前方から人の気配がした。

 シンは苦い顔をして引き返したい心境になった。

 リィはそんな兄を横目で見て、それから、前からやってくる人物に目をやった。綿飴のような白い髭を蓄えた、黒い神官服に身を包んだ老人がやってくる。その後ろには同じような神官服を着た者たちがズラリと並んでついてきていた。

 老人はシンとリィを見留めると、垂れ下がった白い眉の下で目を細めた。

「これはこれは殿下方。先程の演武は実に見事でございました」

 老人は穏やかな声でそう言いながら、両手を組んで膝をつき、頭を垂れた。それに倣うように、後ろの神官たちも次々に膝をついて頭を垂れる。

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