ポプリ
 だからあとは気力の問題だと。

 仲間たちには大きな負担をかけることになったが、試すだけの価値はあったのだと思う。

 禿鷲に見せつけたかったのだ。

 圧倒的な力。

 何よりも仲間たちとの絆を。

 彼を劇的には変えられなかったのだとしても。それでも、いつか芽吹く“種”くらいは植え付けられたと、そう自負している。


 
「それで、15柱も」

 ハア、と呆れたようにシンは溜息をついた。

「お前、馬鹿なのか」

 馬鹿に馬鹿と言われてシオンはむっとした。

 父のことは尊敬しているけれども、頭の出来は自分の方が上であると思っているし、実際にそうだ。

 けれども反論はしない。

 父が強すぎる人だから、というのもある。

 しかし一番は。

 反抗期真っ盛りの頃に心のままに反抗し、真っ向からぶつかり合う殴り合いの喧嘩になり、城の一部を破壊してしまったことがあった。

 恐ろしい親子喧嘩は、野菊のほわほわ笑みからの「あのね、神様だからって何でもしていいわけじゃないんだよ。お城の修繕誰がやると思ってんの? 建築課の皆さんなんだよ。原因なんだって聞かれて、親子喧嘩ですって言うの? こんなに壊れた部屋を前に? もう、お母さん恥ずかしいよ」という、お説教で幕を閉じた。

 巷ではこの世界最強の親子を正座させて説教するリザ家の公妃様こそ最強、と囁かれ、最強親子はあまりの恥ずかしさに小さくなって反省した。以来、親子喧嘩はしないようにしている。

「力を見せつけるにしても、一柱だけでも十分だったはずだ。随分中途半端になったんじゃないのか」

「……はい。技としては不完全もいいところでした」

「ティナだけでも良かっただろう。教えただろ、ディアトレーコーン・アステール(獅子流星群)。じゃなきゃ、ユースティティア・マレウス(正義の鉄槌)とか、アブソリュート・ゼロ(氷の終焉)とか、キュムロニンバス(雷獣咆哮)とか」

 厨二な技名の連発に、シオンは顔を引きつらせた。

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