ポプリ
 これらの技に、名前は必要ない。

 なのに父はこれがカッコイイのだ、と名前をつけた。それを息子にも引き継がせたいらしい。

 勘弁してほしい。技の威力は凄まじい。どんなピンチをも凌げるだろう。技名もいいと思う。表向きは恥ずかしいから嫌だと言いながら、何か心を沸き立たせ、揺さぶられるものがある。

 けれどそれを認めてしまうと父と同格になってしまうと、何となく忌避したくなるのだ。

 父のことはもちろん尊敬している。でも同じにはなりたくない。この息子の微妙な心情を理解して欲しい。

「女王たちにも負担をかけただろう」

「それは……はい」

 確かに女王たちには負担をかけた。そこは神妙に頷く。

「彼女たちがお前を助けるのは彼女たちの意思だから、俺からはとやかく言わない。でもその好意に甘んじることはするな。それから、仲間たちに対しても」

 そこで、シオンはぐっと唇を噛んだ。

「彼らには心配をかけただろう。特にリプニーには。彼女は倒れるまでお前の看病をしていた。ひと月もの間、どんな思いでお前の目覚めを待っていたか、考えろ。……俺たちも、心配をした。大勢の者が心を痛めた。皇家の力を過信し、中途半端なまま行使した。その力が周囲に与える影響を考えても、お前には罰が必要だ」

「……はい」

 父に射貫かれるように見つめられて、シオンは深く頷いた。

 確かにその通りだ。

 大切な人を泣かせてしまった罪は、償わなくてはならない。

 受け入れる覚悟をしたシオンに、シンはずいと近づく。

 そして。

 がっちりと、シオンを抱きしめた。

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